ウェルネスビジネス

健康経営のROI:企業の健康投資が生む経済的価値

企業が健康経営に投資する経済的根拠を解説。プレゼンティーイズム・アブセンティーイズム・医療費削減・生産性向上などのROI計測方法と、効果的な健康経営施策を紹介。

読了 約7分 2026年3月 編集部

この記事のポイント

  • 健康経営投資のROIは平均3〜6倍(1ドル投資で3〜6ドルのリターン)という研究がある
  • プレゼンティーイズム(出勤しているが生産性が低い状態)のコストはアブセンティーイズムの2〜3倍
  • 経済産業省の「健康経営優良法人」認定を取得した企業は株価パフォーマンスが良好
  • メンタルヘルス対策の費用対効果は特に高く、1ポンド投資で5ポンドのリターンとする英国研究がある

健康経営施策別の費用対効果(ROI)比較

参考: Baicker et al., Health Affairs 2010

平均ROI 3.7倍 運動促進 メンタルH 禁煙支援 栄養指導 睡眠改善 総合的 ROI(倍) 導入コスト(相対値)

なぜ企業は健康に投資すべきか

日本の企業における健康関連コストは、医療費・欠勤(アブセンティーイズム)・生産性低下(プレゼンティーイズム)を合計すると、従業員1人あたり年間約30〜50万円に達するという試算があります。

特に見落とされがちなのがプレゼンティーイズムのコストです。体調不良や精神的不調を抱えながら出勤している従業員の生産性低下は、欠勤コストの2〜3倍に達するとされています。Harvardの研究では、メンタルヘルスの問題による生産性損失は年間1人あたり約5,000ドル(約75万円)に及ぶと試算されています。

KEY DATA

Baickerらの研究(2010年)では、企業の健康増進プログラムへの投資1ドルに対して、医療費が3.27ドル、欠勤コストが2.73ドル削減されることが示されました。

健康経営ROIの計測方法

健康経営のROIを計測するためには、以下の指標を追跡します。

定量指標

  • 医療費・保険料の変化
  • 欠勤率・欠勤日数の変化
  • プレゼンティーイズム(WHO-HPQ等の尺度で測定)
  • 離職率・採用コストの変化
  • 産業事故発生率

定性指標(間接的効果)

  • 従業員エンゲージメントスコア
  • 組織の活力・イノベーション指標
  • 採用競争力(健康経営ブランド)
  • 健康経営優良法人認定の取得

ROI計算式の基本
ROI(%)=(便益 − コスト)÷ コスト × 100

ROIが高い健康経営施策

① メンタルヘルス対策(ROI最高水準)
EAP(従業員支援プログラム)・ストレスチェック活用・管理職向けメンタルヘルス研修。英国のFit for Work報告書では、1ポンド投資で5ポンドのリターンとされています。

② 禁煙支援
喫煙者の医療費・欠勤率は非喫煙者の1.5〜2倍。禁煙支援プログラムへの投資回収期間は約1年とされています。

③ 身体活動促進
フィットネス補助・ウォーキングイベント・昼休み運動プログラム。2〜4年での投資回収が可能。

④ 睡眠改善プログラム
睡眠不足の従業員の生産性損失は年間約234,000円/人という試算があります。睡眠衛生教育・勤務環境改善でROI 3.5倍程度が期待できます。

DISCLAIMER

本記事のROI数値は研究・試算に基づくものであり、個別の企業・環境によって異なります。

参考文献

  1. Baicker K, et al. Workplace wellness programs can generate savings. Health Affairs, 2010.
  2. Goetzel RZ, et al. The relationship between modifiable health risks and health care expenditures. J Occup Environ Med, 1998.
  3. Deloitte. Mental health and employers: Refreshing the case for investment. 2020.
  4. 経済産業省. 健康投資管理会計ガイドライン. 2022.